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2016年7月

2016年7月 5日

英語考

This is a pen. That is a book.
These are the first sentences that I learned at junior high school.
 その頃の私は英語の学習にのめり込んでいて、英語は素晴らしい言語だと思っていた。

 しかし、高校に入っていろいろな単語が登場してくるにつれ、英語というのはなんというゴチャゴチャした言語なのだろう、と思うようになった。

 まず第一に、綴りと発音との対応規則が「ない」。ソニックとかなんとかいって規則らしいことを言う人もいるが、例外が多すぎて使えたもんじゃない。例外が多すぎる規則は、規則とは呼べない。英語の綴りと発音の関係がゴチャゴチャしているのはたぶん、次の段落にも書いたように、ドイツ語やフランス語などに見られる読みと綴りの関係が規則的になるような工夫を何もする余裕がないほど速く、多くの外来語を受け入れてきたことにも関係があるのだろう。しかも、ヨーロッパの言語由来の単語の場合、元の言語での綴りをできるだけ保存しようとする傾向がある。これは言い換えれば、ドイツ語やフランス語の文章に見られるような、文字にくっついた記号(ウムラウト、アクサン etc.)がほとんどないので、見た目がすっきりしている、という言い方もできる。

 第二に、意味が重複する単語が多い。英語本来のアングロサクソン固有の単語、古代から中世にかけてのヨーロッパの共通語であるラテン語からの借用語、そのラテン語に溶け込んだギリシア語、また、イギリスを占領したことのある異民族の言葉…フランス語、デンマーク語、ノルウェー語からも多くの借用語がある。語彙が多くて意味が重複するというのは、言葉を変えて言えば、微妙なニュアンスの違いで言葉を選ぶことができる、ということでもある。しかし、この恩恵を受けるのはネイティブに英語を習得している者たちだけである。

 見た目はすっきりしているが、発音と綴りが不規則で、単語一つ一つの綴りと発音を確実に記憶しなければならないこと、同じような意味の単語が多いことなど、英語は外国人にとって習得しにくい要素が多い言語であると言えよう。

 ゴチャゴチャしているのは日本語も同じである。訓読みと音読み、音読みの中にも漢音や呉音や慣用音など、漢字の読み方がいろいろある。送りがなの付け方は、時々規則が変更される。漢字を使用している他の国の人々にとっても、日本語の中の漢字を読み書きするのは一苦労のようだ。明治以降はヨーロッパから大量の単語を借用し、一部は漢字の熟語を創作したり、一部は発音を日本語風に変更してカナ書きしたりで、ゴチャゴチャしている。多様な語源の借用語があるという状況も英語と非常によく似ていて、同じような意味の単語が多い。
 ユーラシアの西の端近くの島国で生まれた言語と、ユーラシアの東の端近くの島国で生まれた言語が、どちらもゴチャゴチャしているという点で共通なのは、ある意味、親しみが持てると言うこともできようか。

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